4.環境関連法規等の取りまとめ

 

事業を行うにあたって遵守しなければならない環境関連法規及びその他の環境関連要求事項を整理し、一覧表等に取りまとめる。
環境関連法規等は常に最新のものとなるよう管理する。

[解説]
対象組織の事業活動、製品及びサービスに適用される環境関連法規等及びその内容について、正しく理解し把握しておくことが必要です。また、環境関連法規等は最低でも年に1回、例えば年度末または年度はじめに見直しを行い、常に最新のものとする必要があります。
環境関連法規等には、国や府省が定めた法令、省令、自治体等が定めた条例、規則、その他の環境関連要求事項としては、地域の協定、顧客(納入先・取引先)からの要請、業界団体の取り決め等があります。

どのような法規等が該当するかについては、環境省ホームページ、事業所所在地の都道府県、政令市ホームページで情報収集したり、事業所所在地の地方公共団体に問い合わせること等も一つの方法です。
また、取りまとめにあたっては、該当する条項、遵守すべき項目等を明確にする必要があります。環境関連法規等については、環境汚染物質等の排出濃度の規制だけでなく、公害を発生させる設備等の届出、地球温暖化防止や廃棄物の減量・リサイクル等に関する計画の策定、責任者や有資格者の選任と届出、製品及びサービスにおける環境に関する適合基準等を規定している場合があります。それらについて、何を遵守し、そのために具体的にどのような取組をする必要があるのかを明確に取りまとめることにより、遵守を確実なものとします。また、顧客(納入先・取引先)からの要請がある場合は、その内容等を明確にすることが必要です(製品における化学物質に関する要請等)。
具体的な環境関連法規等の例及び取りまとめ方については、「参考1 主な環境関連法規」を参照してください。

5.環境目標及び環境活動計画の策定

環境方針、環境負荷及び環境への取組状況の把握・評価結果を踏まえて、具体的な環境目標及び環境活動計画を策定する。
環境目標は、可能な限り数値化し、二酸化炭素排出量削減、廃棄物排出量削減、総排水量削減、化学物質使用量削減、グリーン購入、自らが生産・販売・提供する製品及びサービスに関する項目について、中長期の目標と単年度の目標を策定する。
環境活動計画においては、環境目標を達成するための具体的な手段、日程及び計画の責任者を定める。
環境目標と環境活動計画は、関係する従業員に周知する。

[解説]
環境目標は、「何を、どこまで、いつまでに行うか」を、環境活動計画は、環境目標達成のために「どのような手段で、いつまでに、誰が責任をもって行うか」を策定します。
策定にあたっては、環境への負荷及び環境への取組状況の把握等の結果を踏まえるとともに、環境方針で明示した環境への取組の基本方針と整合させます。
具体的には、環境への負荷の把握で特定された、取組の対象とすべき環境負荷及び活動等について環境目標を策定するとともに、原則として二酸化炭素排出量削減(省エネルギー)、廃棄物排出量削減(あるいはリサイクル推進)、総排水量削減(節水)、化学物質使用量削減(化学物質を使用する事業者の場合)、グリーン購入、自らが生産・販売する製品及びサービスに関する目標を策定する必要があります
また、環境目標としては、3〜5年程度を目処とした中長期の目標と、単年度の短期目標を策定するとともに、可能な限り数値化し、数値化できない場合でも可能な限り目標の達成状況の目安となる指標等を策定します。
環境活動計画については、環境への取組状況の自己チェックの結果及びチェックリストに例示された取組内容を踏まえて、単年度の環境目標に対応した具体的な取組の内容(達成手段)、スケジュール及びそれぞれの計画の責任者と担当者を決めます。
環境目標と環境活動計画は、毎年度見直すとともに、事業活動に大きな変更があった場合は、速やかに改定します。
なお、環境負荷の状況によっては、技術的、経済的にこれ以上の削減が難しい場合もあります。また賃貸オフィス等で水道料や廃棄物処理費等が共益費に含まれていて使用量の把握ができない場合もあります。そのような場合は、定量的な環境目標の策定は行わず、定性的な環境目標を策定するか、あるいは環境配慮の取組を手順化し、その取組状況を定期的に確認する等監視・測定を適切に行います。
化学物質使用量削減についても、製造工程及び製品の原材料としての使用量が極めて少ない、また製品の仕様書で使用量等が決められており自らの判断で削減することができない場合等は、環境目標の策定は行わず、化学物質を適正に管理していることを定期的に確認します。
環境目標と環境活動計画は、関係する従業員に周知します。

推奨事項
・組織の規模等に応じ、組織全体の目標に加えて、部門別の目標を策定する
・環境活動計画について、単年度のみならず、中長期の環境目標と対応した中長期の環境活動計画を策定する
・事業活動を生物多様性の観点から見直してみる
・生物多様性の保全と持続可能な利用のため、具体的取組※の実施に努める
※生物多様性に関する具体的取組については、別表2の「4.その他 (1)生物多様性の保全と持続可能な利用のための取組」を参照してください。


環境目標及び環境活動計画の例
具体的な環境目標としては、例えば「2008年度を基準として、2011年度末までに、全社で廃棄物排出量を10%削減する。2009年度は、全社で3%、90トン削減し、これについてA部門は30トン、B部門は60トン削減する。2010年度では全社で3%、90トン削減し、A部門では30トン、B部門では30トン、C部門では30トン削減する。2011年度は、全社で4%削減する。」等が考えられます。
環境活動計画における達成手段としては、例えば「リサイクルルートを確立し、新たにリサイクル業者に引き渡す」、「分別基準を作成し、教育・訓練の実施により基準の周知と取組の徹底を図る」、「原材料の歩留まりを向上させて廃棄物を削減する」、「品質管理を徹底し不良品を削減する」、「廃棄物となった原材料の回収ラインを設け再利用を図る」等が考えられます。スケジュールとしては、例えば「リサイクル業者の調査及び選定を○月、分別基準の周知を○月、分別の徹底を○月」等が考えられます。

◆グリーン購入並びに自らが生産・販売・提供する製品及びサービスに関する環境目標について
エコアクション21をはじめとする環境経営システムにおいては、これまで事業所や工場における環境への取組が重視されてきました。持続可能な社会を構築していくためには、事業所や工場における環境への取組と、自らが購入する原材料や自らが生産・販売・提供する製品及びサービスにおける環境への取組の両方が必要不可欠であり、これらの取組は、事業活動における環境への取組の両輪であるということができます。
そこで、より積極的に取り組んでいただくために、エコアクション21ではそれらの環境負荷削減に関する環境目標を掲げて取り組むことが必要です。
組織の業種・業態・規模、購入する原材料及び製造・販売・提供する製品・サービス等の特性に応じて、製造段階以前の、企画・開発、設計、資材等の調達段階や、製造段階以降の、輸送、販売、使用・利用、廃棄・回収等の段階等、ライフサイクル全体を考慮した取組が必要です。
目標は可能な限り数値化することが望まれますが、数値化できない場合は、「使用する原材料における再生資材等の環境配慮製品の情報を収集する」「製品の環境負荷を削減することを検討するための会議を設置する」、「他社の取組状況を調査する」等の取組に関する環境目標を設定してください。
策定にあたっては、別表2の「環境への取組の自己チェックリスト」の「3.製品及びサービスに関する項目」を参考にしてください。

<製品・サービスに関する環境目標の例>
?省エネルギー型や省資源型の製品を設計する
?省エネルギー型や省資源型の製品を生産する割合を増やすまたは販売を増やす
?リサイクルしやすい製品設計をする
?有害化学物質の含有量が少ない製品設計をする
?再生材を多く使った製品設計をする
?環境に配慮した製品を生産または販売する
・環境負荷の少ない工法を採用する
?配送ルートを効率化する
?販売時の包装を簡易化するまたは無包装化する
?マイバックの使用を推進する
・環境に配慮した原材料を使用する
・環境に配慮した事務用品等を使用する
・環境ラベル認定等製品*、省エネルギー基準適合製品*を購入する

☆生物多様性とは
生物多様性条約では、全ての生物の間の変異性と定義し、生態系の多様性、種間(種)の多様性、種内(遺伝子)の多様性という3つのレベルがあるとされています。分かりやすく言えば、地域に固有の自然があり、それぞれに特有の生き物がいること、そして、それぞれがつながっていることとも言えます。
私たちの豊かで安全な暮らしは、水、酸素、食料、繊維、木材、燃料、医薬品、安定した気候、自然災害防止等、様々な自然の恵み(=生態系サービス)によって成り立っています。一方で、近年、日本の国土面積の5分の1にも相当する森林が毎年世界から失われており、生物種の絶滅速度はここ数百年で約1,000倍に加速する等、生物多様性を取り巻く状況はきわめて深刻です。
我が国では、生物多様性基本法において生物多様性に対する事業者の責務が定められ、第三次生物多様性国家戦略*では、事業活動と生物多様性の関わりが示されると共に、生物多様性の保全と持続可能な利用を社会経済的な仕組みの中に組み込んでいくことが期待されています。そして、事業者の生物多様性に関する活動への参画を促すことを目的に、生物多様性民間参画ガイドライン(2009年8月)が策定されました。
将来に渡り、その「生物多様性」の恵みを享受し続けるためには、事業活動が直接的、間接的に及ぼす影響を意識し、その恵みを保全するまたは持続可能な利用を行っていく必要があります。